(11)夜逃げ1平成2年。今から16年前のお話です。・・・昨日は、トリノオリンピックも開会式の様子が一日中何度も放送されて かなり、英語の勉強になりやしたね♪ あっしなんか、「ネパール」と言う国名が「ニッポン」って聞こえてしまいやしたが、 あの開会式の様子をビデオに撮っておいて、何度も観れば 国の名前と発音と、その国の人種的なものをいっぺんに覚えられるような気がしやす(笑) ・・・さて、16年前にも冬季オリンピックがあったはずでやんすが、 時間がないので、つづきは今日帰ってからということで とりあえず仕事に行ってきやすm(__)m --------------------------------- いやはや、16年前には冬季オリンピックはなかったでやんす。 1992年、フランスのアルベールビルで開催されやしたが、その2年後に リレハンメルで行なわれた為、4年に一度というあっしの記憶は間違いでやんした。 さて、オリンピックはともかく あっしのお話に入りやしょうね。前置きが長すぎやした。 前回までのお話は、あっしの尊敬する上司の事で あれこれと横道にそれてしまったんですが、 今回のタイトルは、いかにもその上司が、あっしのミスにたいして 接してくれたその姿に感激したお話です。 平成2年というと、4月の末にあっしとカミサンが一緒になった年でやんす。 まだ昭和から平成という元号に変わったばかりで 世の中もなんとなく殺風景な、不安定な時期だったように思います。 昭和の後半からバブル景気という、戦後の高度経済成長から一時期を経て 世の中の景気がまたいちだんと上昇した時期がありやした。 あっしはその頃まだ社会人になって間もない時期でしたから あまり「バブル」の恩恵にあずかった記憶もありやせんが 何しろあっしが自動車のセールスを始めた頃には よく先輩達から、バブル全盛期には 店に行列が出来るほどクルマが売れたそうでやんす。 まあ、少々大袈裟でしょうが、あっしはそんな時に オイシイ思いをしなくて良かったなぁ、と今さらながらに思いやす。 ★・・・あっしが、入社して4年目のことでしょうか。 夜、小松支店のショールームで番をするのも退屈なので 中古車を展示してある外へ出ていやした。 敷地内には 10台ほどしか中古車を展示してなかったでやんすが、 そこに幼稚園くらいの 人なつっこい女の子が車の周りをウロウロしていやした。 ・・・よく見ると、いちばん端っこのほうにその子の母親らしき女性が その子を見守るように微笑んでいやした。 あっし、すかさずセールスマン根性を出して 女の子に近づき、しゃがみこんで話し掛けやしたよ♪ 『ねえねえ、お母さん、あっちで待ってるみたいだよ? 大丈夫なの?怒られない?』 と問いかけると首を横に振って 『おじちゃん、どこの人?』と笑いながら返事をされたので こっちのほうがタジタジになってしまいやした。 あっし、向こうにいる母親らしき人に助けを求めるように会釈をしやした。 やはりその女性はこの女の子の母親だったのです。 その女性のいでたちは、スラリと背が高くスタイルも良く スーツがとても決まっていやした。 女の子は母親が近づいてくると、にわかに甘えん坊な普通の幼稚園児に戻った感じで 母親の膝元に巻きつくように飛びつき その格好で、再びあっしを見つめながら 『このおじちゃん、遊んでくれたよ。ママ!』 あっしは何か気恥ずかしい気持ちになりやしたが 気を取り直して、もう一度会釈しながら 『可愛らしいお嬢さんでやんすね♪クルマが好きなんでやんすか?』 と尋ねると、 『この子。自閉症なんです。だからあんまり自分から話しかけることなんてないんですよ?』 『こんなに嬉しそうな顔して見ず知らずの人としゃべったり遊んだりした事なんて見たことないですよ?』 ・・・あっし、そんなに子供にモテルんかいな? と一瞬どうでも良い事を思ってしまいやしたが、 女性が続けざまに『あのう、、こちらでクルマを買いたいんですけれど…。』 いきなりかよー。 『ウチの娘がなついてしまうお方なら、きっとイイ方だと思いますし、 ぜひこちらでクルマのお世話をして頂けないでしょうか。』 ・・・契約は2日後に成立しやした。 クルマはボンゴバンのリース契約になりやした。 ご主人が塗装工事のお仕事をなさっていて 奥さんが、その営業をされているという事でした。 ご主人は職人さんで、あまり人と話すのが得意でないと言う事は 会ってすぐに分かりやした。 だけど、お人好しな感じで少し頼りなさそうな人だったので やはり奥さんがいなければ仕事を取ってくるのは難しいだろうなあ、 なんて、あっしは勝手に想像したりもしやした。 ★契約が成立し、納車してからもあっしは営業マンですから もちろんの事ですが何度もフォローの為に足を運びやした。 このご夫婦は、本当にあっしに対していつも座敷に上げていただき こちらがお客様か、と間違えてしまうくらいに丁寧に応対して下さいやした。 ・・・ところが、ある日突然、小さな女の子も一緒に このご家族が、、、、、、居なくなってしまったのです。 そうです。忽然と消えてしまったのです。 納車してから半年ぐらい経ってからでしょうか。。 あっしが気づいたのは、たぶんそのご家族が居なくなってから 1週間は経過していたんでしょう。。 あっしは、そのご町内の班長さんの家を訪ね、どうされたのかと聞くと どうも夜逃げらしい。。 あっし、今だったら「やられた・・。」って言葉を発するかも知れやせんが、 その時は「なんであっしに黙って引っ越したの?」くらいにしか考えやせんでした。 ・・・つづく。 次へ |